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23話 王族への道平民ユウヤと皇女ミリアの婚約騒動

作者: みみっく
last update 最終更新日: 2025-07-04 07:00:07

「それもそうですわね」

 ミリアも納得したようだ。

「まぁ……ミリアがいてくれれば、問題ないと思うけどさ」

 俺がそう言うと、ミリアはぷくっと頬を膨らませた。

「か弱いわたくしに、いったい何をさせようというのですか……?」

「いやいや、か弱い女の子が王様をイジメたりしないでしょ」

「イジメてませんわ……」

 ミリアは膨らませた頬のまま、ぷいっとそっぽを向いてしまったけれど、からかわれてるだけだと分かってくれてるようで良かった……。

「じゃあ治癒の薬と美容薬を作って帰りますか」

「はぁい♪ ユウヤ様」

 ミリアは楽しそうに返事をした。

「ユウヤ様、本当にご婚約を?」

 王様が、恐る恐る尋ねてきた。その声には、まだ不安が残っているようだ。

「え? あ……はい」

 俺は曖昧に答えてしまった。

「ユウヤ様……なんですの、その間は?」

 ミリアが不満そうに俺を見上げた。

「えっと……俺で本当に良いのかなと……ミリアはお姫様だったし」

 王様より地位のあるミリアが平民の俺と結婚して良いのか? 結婚して俺はどうなるんだ? 不安なんですけど。その心配を王様がしてくれてるのか……? 俺の内心は、期待と戸惑いが入り混じっていた。

「ユウヤ様じゃなきゃダメなのです!」

 ミリアはきっぱりと言い放った。その声には、一切の迷いがなく、強い意志が込められていた。

「だそうです」

 俺は王様の方を見た。

「そうですか……ご婚約おめでとう御座います」

 王様は、安堵したように言った。その顔には、重い荷を下ろしたかのような清々しさが見える。

「有難う御座います」

「ミリア皇女殿下。ユウヤ様を、うちの養子に致しますか?」

 王様が、ミリアに提案した。ん?王様の養子?俺が王族になるの?意味が分からないんだけど?

「そうね……お願いできるかしら」

 ん? ミリアさん? 何を言ってるの? 勝手にお願いしないで! 俺はミリアの言葉に、思わず目を見開いた。

「はい。喜んで協力させて頂きます」

 王様は、深々と頭を下げた。

「え? 養子?」

 俺は混乱して尋ねた。頭の中で、これまでの常識がガラガラと音を立てて崩れていく。

「はい。平民と皇女殿下は結婚は出来ないので……王族の養子となってから結婚をするのです。とは言っても王族の養子にも平民はなれないので貴族の養子にもなって頂きますが」

 王様は丁寧に説明してくれた。

 え……なにそれ、人間のマネーロンダリングみたいな感じじゃん。貴族の養子になり、そこから王族の養子になるという、複雑で異例のプロセスに、俺はただ呆然とするしかなかった。

「へぇ~……そう、それは……助かるよ。俺は分からないから……ミリアに任せるよ」

 俺は半ば諦め、この常識外の状況をミリアに委ねることにした。いわゆる、丸投げをミリアにした。

「王様に任せて大丈夫ですわよ。次が無いとお分かりでしょうし」

 ミリアは王様をちらりと見た。その視線に、王様はビクリと反応する。

 あぁ、ミリアも……ここで一番立場が弱い王様に丸投げをしたみたいだな。

「はい。お任せ下さい……」

 王様は、震える声で答えた。

 兵士に案内されて薬の材料保管庫へ向かうと、「材料は自由に使って構わない」と告げられた。 棚には薬草や珍しい鉱石などが整然と並んでおり、見た目にも整備が行き届いていることが分かる。

 ただ、まったく材料が減っていないと不自然に思われかねない。そこで俺は、使用したことにするためにいくつかの材料を適当に収納しておいた。――まあ、“代金代わり”ということで、ありがたくいただいておく。

 その後、治癒薬と美容薬を大量に生成(というか“出現”)させ、それらを箱に詰めて保管庫に積み上げていった。しかし数が多すぎて途中で面倒になってきたため、箱詰めされた状態の薬を最初から山積みにした形で出現させることにした。

 ――こうして、山のように積まれた薬の箱が、保管庫の大部分を占拠するに至った。

「これくらいで良いですかね?」

 王様に確認をすると、驚いた表情になって固まっていた。その目は、信じられないものを見るかのように大きく見開かれている。

「王様?」

「あ、は、はい。随分と大量に作って頂き有難う御座います」

 王様は、ようやく我に返ったように言った。その声には、震えと、純粋な喜びが混じっていた。

 事前に数人の兵士に、薬の使い方と注意点を簡単に説明しておいた。「詳しいことは、彼らから聞いてくれ」と俺が告げると、王様は深々と頭を下げた。

「はい。お役に立つか分かりませんが……王族でも一部の人間しか持てない王家の紋章の入った剣とナイフを、お詫びとお礼と——忠誠の証として差し上げます」

 王様が跪き差し出してくるので、ミリアの方を向いて確認をすると、頷いていたので貰っておいた。これは実践用じゃなくて、豪華に装飾をされた装飾品の剣だよな……普段使い出来る剣が欲しかったかも。

「有難う御座います。帰る前に王都を見て回ろうか?」

「良いですわねッ♪ デートですわねっ♡」

 ミリアは目を輝かせた。その顔は、期待に満ち溢れている。

「護衛をお付けしましょう」

 王様がそう提案し、ミリアがちらりと俺の方を見て確認するように視線を送ってきた。

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    続きは書けていますが、ただいま調整中です( ̄▽ ̄;)仕事が忙しくてぇ……編集する気力が。放置しているわけではありませんので、しばらくお待ちください✨ミリアさんのツンデレは、いかがでしょうか?たぶんツンデレさんを扱うのは初めてでして……しんぱい。お読みいただきありがとうございます(●'◡'●)

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